Part 5 : 本音で語って聞いて! – Confessions of the funeral attendant –

1センチ1万円? これって本当ですか!?

数年前、私の主人は長い闘病生活の末亡くなりました。いつ逝かれても覚悟はしているつもりでした。ところが、実際は予想に反して気が動転してしまい、恐らく身内には迷惑をかけたかもしれません。
当時は先々の不安はもちろん、目の前に置かれていることすら手につかない状況で、はっきり言って何をどうしたかなど、ほとんど憶えていないのが正直なところです。ですから、葬儀のことは断片的にしか思い出すことができません。

だけど、一つだけ印象深く憶えていることがあります。それは、主人が入るお柩にまつわる出来事です。主人は身長185㎝もある大きな人でしたから、何となく大きな柩が用意されるものと思っていました。
ところが葬儀屋さんが用意した柩は、主人の膝が曲がってしまうほど小さなものだったのです。あまりに主人がかわいそうに思えたので、そばにいた葬儀屋さんに「大きな柩はないのですか?」と聞くと、その彼は「昔は屈葬といって体や足を曲げて納棺したくらいですから、このくらい大丈夫ですよ」と返答。思わず「えっ」と聞き返し、開いた口がふさがらないほど呆然としてしまいました。

そして、つい頭に血がのぼり「ちゃんとサイズに合った柩を持ってきてちょうだい!(怒)」と、きつく言い放ってしまったのです。
言った後に「いけない」と反省していたのですが、その葬儀屋さんは私をじっと見つめながら信じられないことを言ったのです。「そうですねえ、あと10㎝くらい長いのが必要になりますから、10万円追加となりますがよろしいですか?」と言うのです。続けざまに、柩に視線を移し「柩は1㎝1万円が相場なんですよねえ」と訳のわからないことを言ってのけたのです。

落ち着かなきゃと思ってるにも関わらず、更に感情を逆なでするかのようなこの発言に、たまらず怒りを爆発しかけたそのとき、私の長男が割って入り、その葬儀屋さんに「お前さんいい加減にせいよ!」と一言。
ちょっと強面な長男の“ドス”の利いた声だったから大変。葬儀屋さんの顔色がみるみる変わり、顔をこわばらせながら「すみません」といって、部屋から出て行ってしまいました。
その後、どのくらい時間がたったか分かりませんが、長男に怒りをぶちまけていると別の葬儀屋さんが部屋へ入ってきました。

身なりをきちっとしたその人は神妙な面持ちで長男と私の前で深々と頭を下げ、先ほどの件を詫びたのです。そして、スタッフに合図をして真新しい大きな柩を運んでくれました。
わたしは、たまらず「お金の問題じゃないんですよ」と言うと、きちっとした葬儀屋さんは再び頭を深く下げ「充分わかっております」「何分説明不足で大変申し訳御座いませんでした」と本当に申し訳なさそうに弁解しました。
内心「説明不足ってどういうこと?・・・」とまた頭に血がのぼりそうでしたが、料金はそのままでと言うので、長男の目配りで怒りを抑えました。

長男の話では、柩をキッカケに葬儀屋さんの態度はもちろんのこと、清算のときにはかなり値引いてくれたそうです。それにしても今振り返ると、何てたわいもないことなのだろうと思うばかりです。単に聞いただけなのに、訳のわからない返答のせいで葬儀の思い出が柩のことなのです。
信じられます?こんな話!

柩が頭から離れないわたしさんより

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