日本語では”遺体衛生保全”と呼ばれます

ご遺体を消毒や保存処理、また必要に応じて修復することによって長期保存を可能にする技法のことです。土葬が基本の北米等では、ご遺体から感染症が蔓延することを防止する目的からもこの技法が用いられています。

遺体のメークアップとは違う「エンバーミング」

「エンバーミング」は、欧米で葬儀葬送に際して一般的に行われています。

その目的は、ご遺族のかけがえのない身内を失った悲嘆を少しでも和らげ、慰めることにあります。
具体的には、ご遺体の身体の中に残る飲食物の残滓や体液、血液を吸引して除去したり、動脈から防腐剤を注入するなどの処置によってご遺体が常温でも保存されるようにします。さらに、そうした防腐処置を施した後に、ご遺体の全身と毛髪を洗浄し、美容的な処置や化粧などで表情を整え、仕上げにはご遺族の希望に沿った衣装を着せます。
こうして、ご遺族にとっては故人があたかも生前のままに眠っているかのような、安らかな姿にご遺体を修復して保つのです。

こうした「エンバーミング」を提供できるのは「エンバーマー」とよばれる専門技能者で、遺体処置技術だけでなく医学・生理学などの知識・技術を修得し、なおかつ葬儀葬送やグリーフケアの知識・経験も求められます。

事故や治療跡の修復

ご存知のように痛ましい死を遂げたアメリカ合衆国/第35代大統領のジョン・F・ケネディをはじめ、マリリン・モンローやマイケル・ジャクソンなどアメリカを代表する著名人もエンバーミングを施されています。

長い闘病生活でやつれてしまっていたり、また事故や災害などで亡くなった場合、ご遺体が損傷していることもあります。

このような時には、故人の生前の写真などを参考に、損傷等の修復を行うなど、エンバーミングをすることで、元気だったころの故人の姿に近づけることができます。

また、ドライアイスを必要としないため極端に冷たくなることもなく、死後硬直で身体が硬くなることもありません。生前と変わらない様子を保つことができます。

通常、ご遺体は時間の経過とともに腐敗が進みます。

しかしエンバーミングをすることで、防腐剤の濃度や量などの条件にもよりますが、数日から数週間程度、ドライアイスを使ったり冷蔵施設に安置することなく、室温でそのままの姿を保つことができます。
ご遺体からの病気の感染という危険もなくなるので、故人の体に触れても問題はありません。感染症により亡くなった方の場合でも一定の効果があります。
なお、日本国内で死亡した外国人を本国に送る際には、ご遺体にエンバーミングを施すことが義務付けられている場合があります。エンバーミングを施し、納棺をしたうえで空輸しますが、その際、当該国の大使館職員が立ち合うこともあります。

行程について

日本でのエンバーミングとは、エンバーマー(Embalmer)と呼ばれるエンバーマー・ライセンスを取得した者、あるいは医学資格を有した医療従事者によって、化学的・外科学的にご遺体を処置されることを指します。

現代のエンバーミングは、具体的には以下の方法で行われます。
  1. 全身の消毒、及び洗浄を行う。
  2. 遺体の表情を整え、必要に応じて髭を剃るなどの処置を行う。
  3. 遺体に小切開(主に頸部など)を施し、動脈より循環器経路を使用し防腐剤を注入するのと同時に静脈より血液を排出する。
  4. 腹部に約1cmの穴を開け、そこからトローカーと言われる金属製の管を刺し胸腔・腹腔部に残った体液や、腐敗を起こしやすい消化器官内の残存物を吸引し除去する。また同時にそれらの部分にも防腐剤を注入する。
  5. 切開を施した部位を縫合する。この時、切開を行った部分にはテープ等を貼り目立たなくする。事故などで損傷箇所がある場合はその部分の修復も行う。
  6. 再度全身・頭髪を洗浄し、遺族より依頼のあった衣装を着せ、表情を整え直した上で化粧を施し納棺する。

上記処置が施されたご遺体は長期保存が可能となります。自主基準により海外搬送のケースを除き、火葬埋葬までの日数を50日以内と定めています。処置後、定期的なメンテナンスを行うことにより、ある程度生前の姿を維持し保存することが可能です。