エンバーミングの由来

ご遺体の容姿を整え、損傷があれば修復し、防腐及び防疫的な処置を施すこの技法のルーツは、古代エジプトやマヤのミイラづくりにまで遡ると言われています。

当初、「標本のための防腐」という解剖学上の目的でエンバーミングが行われていましたが、現代のような葬儀形態がこれに関わってきた背景には、米国の南北戦争(1816〜65)の折に大量の遺体搬送が行われたことがきっかけとなったようです。当時の交通手段では兵士の遺体を故郷に運ぶのに長期間を要し、遺体保存の技術が必要とされました。また、この南北戦争終了直後に暗殺されたリンカーン大統領の遺体にエンバーミングが施され、多くの市民の目に触れることを可能にしたことで社会的な認知を得た経緯があります。更にベトナム戦争による同様の理由からこの技術は一層の技術的発展を見ました。

そして、時を移し、国際社会というバリアフリーが謳われる現代において、海外派兵や旅行者の急増に伴ってエンバーミングの必要性も高まりつつあります。

宗教的解釈及び背景

キリスト教では、最後の審判に際し死者の復活という教義を持つことから、伝統的にカトリック教会の見解として火葬を禁止してきました。しかし20世紀に入って、1913年にはチェコ・カトリック教会、1944年に英国国教会、1963年にフランス・カトリック教会が「火葬は教義に反しない」と火葬を認めました。

これに遅れて、1965年には、カトリック教会が教令1203条の「火葬禁止令」を撤廃し、バチカンの正式見解として「火葬は教義に反しない」としたため、地域による格差はあるものの、徐々に火葬が許容されつつあります。

法律上の解釈

日本ではエンバーミングに関して制定された法令がありません。従って、事業者や技術者はそれぞれが掲げる自主基準に則って施行しています。

民事訴訟の判例においては、日本遺体衛生保全協会が規定している自主基準や関係する法令を遵守し、かつ尊厳を持ち行われた場合、遺体に対する配慮と遺族の自由意志に基づいたものである限り、医学資格を有しない者がエンバーミングを行なっても違法とは言えないとしています。

そのため、エンバーミングを行う前には、ご遺族に内容の説明を行い、理解したとの同意の上で「同意書並びに依頼書」に署名する手順を厳守しなければなりません。

エンバーミングの問題点

近年、日本でもご遺体の修復や保存に関する商品化が葬儀業界内でも高まりつつあり、環境省からの行政指導を受けながら、エンバーミングを日本に定着させようとする動きがあります。

日本でエンバーミングを行う場合、葬儀の商業行為の一つのオプションとして行われますが、日本では長期保存の文化はなく、主に葬儀社などが有している遺体保冷庫による低温保存が行われています。国内の葬儀社で行われているエンバーミングはアメリカやカナダの州資格を持った外国人が担当することが多く、その作法は彼らの州法や規則に従って行われるため、企業内での教習も日本国内の法や規制には即していない部分も少なからずあります。そのため日本の文化、法律に適した作法を有するエンバーマーの養成が課題となっていますが、エンバーマーは多種多様な葬儀に関する知識のほか、医学、解剖学、組織学、公衆衛生学、化学といった幅広い知識も必要な専門職であり、現在その公的な資格はなく、葬儀業界団体の認定資格や企業内資格に留まっています。

我が国におけるエンバーミングのあり方と現状

欧米では遺体処置が目的

欧米では、湯灌やエンゼルケア、死化粧のように一般的な遺体処置方法としてエンバーミングが選ばれています。そのため、北米での普及率は80%以上あり、北欧や英国でも約70%あると言われています。

日本では長期保全が目的

実際にエンバーミング処理を行なう目的の多くは、どうしても葬儀まで日数が掛かってしまう場合に限られているようです。ドライアイスだけでは、通常 遺体は3日~4日で腐敗がはじまり臭いも出ます。しかし、エンバーミングを施せば10日~2週間程度 腐敗することはありません。長期保全が目的のため、日本ではエンバーミングの普及率は1%程度です。

日本にエンバーミングが導入されてから約30年になりますが、未だその認知度も低く、その有効利用は一般的には遠いものとなっています。
本来、エンバーミングとは先述したように、ご遺体を衛生的に保全することでご遺族やご葬儀に関わる方々への感染を防ぎ、ある一定期間を衛生的に維持できるので、時間にゆとりのある最後のお別れを行うことができます。したがって海外や遠方からのご弔問にも対応できます。

また、ご遺体を衛生的に限りなくご生前に近い状態にするエンバーミング処理は、ご遺族の皆様に心温まる最後のお見送りをして頂くためのものでもあります。

エンバーミングとは?